貴方の好きな女流ピアニストは? - www.78rpm.net

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Great Pianists of the past

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Irene Scharrer
イレーヌ・シャーラー
Irene Scharrer
(1888-1971)
投票で人気を集めたシャーラー。1910年代から積極的に録音を残した。1930年後半より一線を退いたのか、録音が無いのは残念だ。



ヨウラ・ギュラー
The Art of Your Guller
(Nimbus NI 5030)
多くの著名人から絶賛されたギュラー最晩年の録音集CD。



エテルカ・フロイント
エテルカ・フロイント
Etelka Freund
(1879-1977)



Irene Scharrer
マイラ・ヘス
Myra Hess
(1890-1965)



TOPページでアンケートを行った結果をもとに、コラムを書いてみました。愛好家の方々がどの様なピアニストに興味を持っているか、とても楽しく拝見させていただいております。今後もアンケート結果をもとにコラムをどんどん書いていきたいと思っていますので、ご協力のほど宜しくお願いいたします。


アンケートの選択肢が10個と限界があるのでままならない部分はありますが、今回のべ82票(ウチ2票は筆者)の投票を戴いた結果をもとに感想を書きたいと思います。

貴方の好きな女流ピアニストは?堂々第一位に輝いたのは21%の支持を得た英国のレシェティツキ・Tobias Matthay 門下のイレーヌ・シャーラー Irene Scharrer(1888-1971)。LP時代には知名度の低いピアニストだったが、英Pearl(GEMM CD9978)よりCD復刻され再評価を受けた結果ろうか。地味な印象のマイラ・ヘス、ハリエット・コーエンに比べて、イレーヌ・シャーラーの19世紀の雰囲気を色濃く残した演奏が、現代的な演奏に飽きたリスナーに人気が高いのではないだろうか。このCDに収録されたのは全てEL録音盤で、特に1930年代の英Columbia盤は録音状態の良さもあり Scharrer の艶のあるタッチや、切れ味のあるテクニックを堪能できる。しかし意外にも、シャーラーは1910年代から盛んに英HMVへレコーディングを行っており、音質は劣るものの脂の乗ったシャーラーの名演が更に目白押しである。ショパン「練習曲,Op.25-6」は後のColumbia盤よりも疾走感のある軽やかな演奏。そのテクニックに気負いの無い所が素晴らしい。ショパン「夜想曲,Op.48-1」は世界初録音と思われるものだが威厳のあるテンポとメロディーの歌わせ方、過不足の無いダイナミックスでコーダまで一気に持っていかれる。この曲のSP録音には、レオニード・クロイツァー、ラウル・フォン・コチャルスキ、マルセル・シャンピ、マルクジンスキ、ヨゼフ・パレニチェック、ハリーナ・ステファンスカ、ハリーナ・ヴェルシェンスカ、またライブ録音には、ヨーゼフ・ホフマン、レオ・シロタ、ラザール・レヴィ、そしてイレーヌ・シャーラーの従姉妹で同門のマイラ・ヘスなどの名演が目白押しであるが、シャーラーの名演はこの中でもひときわ印象的である。シャーラーはパーセルから同時代の英国作曲家シリル・スコットまでの幅広いレパートリーを持っているが、とりわけリストの「ハンガリア狂詩曲」「ハンガリア幻想曲」、リトルフ「ピアノ協奏曲」など、ブラヴーラを要求される曲目のレコードはどれも面目躍如といった所だ。

17%の支持を得たIsidore Philipp 門下のヨウラ・ギュラー Youra Guller(1895-1980)は知る限りSP録音を残していないが、英Nimbusより最晩年の演奏がCD発売されている(1973年録音のベートーヴェン「ソナタ,Op.110 & 111」が仏ERATOより、仏Danteからは1956年録音のショパン「5つのノクターン&11のマズルカ」が発売されていたが現在見かけない)。バッハ=リスト、ショパン、グラナドスなど、どれも大きなスケールで演奏されており、フィルム・ノワールから抜け出してきた様な容貌と裏腹なその哲学的解釈は、フランスのマリア・ユージナと言いたい。 NImbus収録のグラナドス「スペイン舞曲第2番・オリエンタル」は、何ともいえない侘寂の世界で、この曲の魅力が十二分に堪能できる。その他、1958年頃の放送録音にリスト「ソナタ」やベートーヴェン「ピアノ後奏曲第4番」などがあるが、比較的若い頃の演奏はフランス風の典雅な印象。師匠のイシドール・フィリップもそうだが、ヨウラ・ギュラーの若い頃の録音に乏しいのが残念だ。その後、1950年代から1970年代の放送録音などが、仏Tahraレーベルより続々復刻された。ショパン「ピアノ協奏曲第二番」などはギュラーの魅力を良く伝えている。

予想以上の票を集めたのが、ブゾーニに習い、同国人のバルトークの友人で演奏者、ブラームス・サークルと関係のあったエテルカ・フロイント Etelka Freund(1879-1977)である。残念ながらフロイントのSP録音は無いが、RemingtonへのLP録音とプライヴェート録音がまとめて英Pearl(GEMM CDS9193)より2枚組でCD復刻されているのは快挙だ。聡明でチャーミングな容貌のフロイントだが、力強い重厚な演奏を聴かせる。印象に残るのはリスト「葬送行進曲~詩的で宗教的な調べ」「小鳥と語らうアッシジの聖フランシス」、メンデルスゾーン「幻想曲嬰ヘ短調」、バッハ「平均律」などの宗教的な大曲だ。この他にもプラヴェート録音でベートヴェン「ソナタ,Op.10-3」、シューマン「謝肉祭」、LPでショパンのワルツ集も残している。エテルカ・フロイントの様な渋いピアニストに、時を経て再び脚光が集まるのは嬉しいかぎりだ。

その他、ざっと触れておく。ブランシュ・セルヴァ Blanche Selvaはアルベニスとの「イベリア」をめぐるエピソードで有名な仏ピアニスト。セヴラックのピアノ曲を12インチ3枚6面でいち早く残している。マイラ・ヘス Myra HessはSPからLPに渡って多くのレコードを残しているが、中でも師であるTobias Matthayの小品を弾いたHMVの10インチ盤は珍重されている。エリー・ナイ Elly Neyはレシェティツキ門下のベートーヴェン弾きで、最近LP時代の録音が纏めてCD化されているが、1920年代初頭のAC録音からレコーディングを行っている事はあまり知られていない。アイリーン・ジョイス Eileen Joyceは1930年代から英Columbiaに数多くのロマンティックな小品を残したピアニスト。マルグリット・ロン Marguerite Longはフランス・ピアノ界の大御所。あまり知られていないがショパン小品のSPレコードはロンの演奏の中でも個性が際立つ名盤ばかりだ。オルガ・サマロフ Olga Samaroff、クララ・シューマンの弟子の中でのファニー・デイヴィス Fanny Davisにあまり票が集まらなかったのは、地味な演奏だからだろうか。




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